EDU-Portニッポン「特別活動の国際化と質保証に関する研究」
EDU-Portニッポン「特別活動の国際化と質保証に関する研究」Study on internationalization and quality assurance of Tokkatsu

「非認知能力の育成に向けた特別活動の国際化と質保証に関する研究」

本研究の意義

グローバルな普遍性とローカルな差異性の関係性の提示

 本研究は、ナショナルな文脈を超えて発揮される(されない)特別活動の機能の解明を目指しており、日本型モデルの適用可能性に向けたチャレンジといえます。普遍的要素と文脈によって異なる要素の関係を考察することで、Tokkatsuを柔軟かつ芯のあるモデルに昇華させることを目指しています。

「逆輸入」による日本型教育のマイナス面の改善・克服

 同調圧力や集団による個の統制といった課題をエジプトがどのように認識し、乗り越えようとしているか明らかにすることで、見直しの視点を獲得できます。日本が長年克服できなかった問題について、解決の糸口を海外から「逆輸入」することを試みます。

教育トランスファーにおける「草の根交流」モデルの構築

 政府主体の「援助」モデル、政府・企業主体の「ビジネス」モデルの海外展開は、ナショナリズムや覇権競争に陥りやすいです。これを回避できるのが実践者・研究者主体の「草の根交流」です。本研究では、Tokkatsuの国際的発展に向けて、日本の研究者が現地の関係者と協働しており、互恵的・継続的に学び合うモデルを提示したいと考えています。

日本特別活動学会との連携

本研究の基盤になっているのは、日本特別活動学会2023年度重点課題研究プロジェクトとして採択された、2つの課題研究です。

エジプト国における特別活動等のデイプロマの研究
(研究代表者:杉田 洋)

 エジプトでは、2016年に日本と合意した「エジプト日本教育パートナーシップ」の下で、特別活動を中心とした日本式教育の導入が進んでいる。同日本式教育のモデル実践を行う「エジプト日本学校」は51校に達し、そこで教える教員の数は17,000人を超えた。また、一般校における特別活動の導入も始まっている。それらの教員の能力向上の課題に対し、エジプト側は短期の専門職コース(Diploma Program)を大学に新設することを希望している。エジプト日本科学技術大学(E-JUST)学長およびエジプト日本教育パートナーシップ幹事長で元高等教育大臣のハニー・ヒラール教授(カイロ大学工学部)より、同ディプロマ・コースのコンセプトを、エジプト側と日本側の研究者が共同で策定できないかとの要望が出された。そこで本研究では、海外における教員向け専門職コース(Diploma Program)の一部に特別活動やその他の日本式の実践的な教育技術の内容を導入するため、学会員の有志によって知見をまとめ、エジプト側が求めるコンセプトノート、両国による協力枠組み、エジプト国高等教育省の大学最高評議会(日本の設置審議会に相当)教育学部会に提出するコース概要等の検討に協力することを目指す。

グローバル・スタンダードとしての日本型教育モデルの開発―Tokkatsuの海外展開の分析
(研究代表者:京免徹雄)

 本課題研究の目的は、日本型教育の海外展開事業(Edu-Portニッポン)の一環として、エジプトの小学校で導入・実施されている特別活動(Tokkatsu)の現地化のメカニズムを、研究者・実践者との「草の根交流」を通じて明らかにすることで、国際的通用性と倫理性を備えたグローバル・スタンダードとしての日本型教育モデルを開発することである。
 グローバルな教育トランスファーの時代を迎える中、日本型教育は認知的な学力と非認知的な社会性や協調性を一体的に育てることに強みをもつ。このうち非認知の部分を中心的に担ってきたのが特別活動であり、世界的に大きく注目されている。しかし、社会的・文化的背景の異なる他国においても、その機能が発揮されうるのか、その際にシステムの維持と変容がどのように生じているのか十分に考察されていない。また特別活動に関しては、集団統制による個性の抑圧に陥りやすいというリスクや、教員養成・研修の不足から熱意や指導力が個人の経験に左右されるといった課題も指摘されている。発信国で確認された負の側面に受容国がどのように向き合っているかという点も、ほとんど研究がなされていない。
 本研究は、ネガティブな側面も含めた特別活動の機能に着目し、維持と変容のメカニズムについてエジプト現地の視点を交えて分析する。また、その成果をもとに、国際的に開かれた「日本型」の在り方を追究する。

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